理想の指導員像

自分は小学生の頃から地元の道場に週3回通っていた。
指導員も何人か居たけど、自分は金曜日のW先生が好きで、毎週金曜日が楽しみだった。
いつも竹刀を持っていて、至らないところがあれば容赦なくビシビシ叩かれていた。
でも、それ以上に誉めてくれた。
その先生に誉められるとやはり嬉しかったし、やる気も出た。
W先生に誉めてもらおうと練習に打ち込むこともできた。
そして、試合で勝ったら自分の事のように喜んでくれたのもW先生だった。
「あの大外いいタイミングで決まったがやー」
「あの内股文句なしの一本だったがやー」
試合に勝った時にくれた言葉、今でもハッキリ覚えている。


自分が大学生の頃、W先生突然の心不全で帰らぬ人となった。
それを知ったときはすごくショックだった。
道場の外、酒の席ではジョークも達者で一緒に居て楽しかった。
人間的な魅力にあふれている人だった。
老若男女問わず誰からも愛されていた。
W先生は亡くして初めて気付いた理想の指導員像だった。


時は流れ、自分は教えてもらう立場から教える立場にも身を置くようになった。
自分の指導のスタンス、スタイルを冷静に分析すると、多少なりともW先生の影響を受けているのに気がついた。
いくら背伸びしてもW先生にはなれない。
でも、W先生が目標と言うのは変わらない。
一生W先生の背中を追い続けることになるだろう。
かと言って、W先生になろうとは思っていない。
自分としてはW先生が自分にしてくれて嬉しかった事をそのまま子どもたちにしてあげたい。
子どもたちに至らないところがあれば怒り、少しでもいいところがあれば誉めるようにしたい。
これが自分なりに構えているスタイルだ。